糖尿病と妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、いわゆる糖尿病とは少し違います。 糖尿病は生活習慣病のひとつで、日頃、必要以上に甘いものを食べすぎていると常に血糖値が高くなって、やがて高血圧や動脈硬化などの可能性が高まるなど、とても恐ろしい病気です(遺伝的要因の場合もあります)。

一方、妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見される糖尿病のことをいいます。 そのため妊娠前から糖尿病の持病がある方や、妊娠初期の採血で明らかな糖尿病と診断された場合は、 妊娠糖尿病には含めない決まりになっています。 ですが糖尿病も妊娠糖尿病も、どちらも妊娠に与える影響は大きいので、しっかり理解して治療する必要があります。

まず糖尿病になると正常な排卵ができず、月経不順や不妊の原因となります。 糖尿病に気づかずに妊娠したケースでは疾患の程度がひどい場合もあり、胎児の先天奇形や流産を誘発することもあります。

また、 妊娠糖尿病になると胎児へ栄養(ブドウ糖)がたくさん移行するため、胎児の発育が過度となって、いわゆる巨大児(出生体重 4,000g以上)になりやすい傾向にあります。大きな胎児はたくさんの尿をしますが、その結果、 羊水過多となり、子宮が張りやすく、切迫早産になる場合もあります。

治療法について

まずは早く診断することが重要です。 その上で治療については、食事指導や運動療法を行いますが、 妊娠初期の場合はとにかく早く高血糖状態を解消したいので、糖尿病専門医の指導のもとで、 自己管理のインスリン皮下注射治療を始めます。 妊娠すると(とくに妊娠20週以降) インスリン抵抗性といって、インスリンが効きにくくなり、血糖値が高くなりやすいことが知られています。 このため、なるべく早く糖尿病に気づき、インスリン治療を開始することが大切です。

妊娠糖尿病が疑われる場合

妊婦健診で尿糖が頻繁に陽性になる方や、肥満で家族に糖尿病の人がいる方、 35歳以上の方で糖尿病が疑わしい場合は、 妊婦健診の際、同時に、 経口ブドウ糖負荷試験を行います。

【経口ブドウ糖負荷試験とは】

検査前日21時以降、水以外の飲食を控えます。 検査当日の朝も水以外の飲食を摂らずに来院し1回目の採血をします。 ブドウ糖が入った甘い冷えた炭酸ジュースを飲んで、さらに2回、合計3回の血糖値を測定します。 3回のいずれかが規定の血糖値より高ければ、妊娠糖尿病と診断されます。

この検査に使用する炭酸ジュースの中には75gのブドウ糖が入っています。 かなりの量に感じますが、 実はいつもみなさんが飲んでいる500mlのペットボトルのジュースに含まれる糖分量とあまり変わらないのです。 市販のジュースは、甘ったるく感じないように、香りや味付けして後味をスッキリさせているので気づかないと思いますが、飲みすぎにはくれぐれも注意してください。 普段から食品の成分表示をよく見て購入するなど、 糖質を意識したほうがいいかもしれません。 現在では妊婦さんのおよそ10~20パーセント 9~10人にひとりが妊娠糖尿病だと診断されています。

出産後は元に戻るのですか?

はい。 妊娠糖尿病は、出産後ほとんどの方が正常に戻ります。但しおよそ30パーセントの人が将来、 糖尿病になってしまうと言われています。 日ごろの食事に注意しながら、適度に運動して健康的な生活を送ることが大切です。

【適正摂取カロリーの求め方】
標準体重×30kcal+付加カロリー
基礎代謝量=標準体重×30kcal
標準体重=身長m×身長m×22kcal

※付加カロリーとは
妊娠初期 50kcal、 妊娠中期250kcal、 妊娠後期 450kcal、 授乳期 350kcal。
なお、肥満の場合、付加カロリーは0kcalとなります。