病気のなかには性差といって、男女の性別の違いにより、発症率に差がある病気があります。

たとえば、男性を1とすると、バセドウ病では女性が4倍高くなります。同じように、橋本病では20倍、関節リウマチでは4倍、全身性エリテマトーデスSLEでは約9倍、シェーグレン症候群では14倍、女性の発症率が高いことが知られています。一般的に、自己免疫性疾患は女性に多いことが知られています。

バセドウ病と橋本病はどちらも甲状腺自己抗体が原因の自己免疫性甲状腺疾患です。どちらも月経不順や流産を契機に発見されることがあり、注意すべき疾患です。

甲状腺とは

のど仏の下にあり、ピスタチオがふたつ、蝶のような形でくっついた小さな臓器で、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺が大きく腫れると外見からもわかるようになります。甲状腺ホルモンはカラダ全体の新陳代謝を促す働きがあり、生命維持ホルモンとも呼ばれます。甲状腺の病気になると甲状腺ホルモンの分泌が増えるか(=甲状腺機能亢進)、減るか(=甲状腺機能低下)のどちらかに分類されます。どちらの状態でも全身に様々なつらい症状が同時に現れるため、いったいどこが悪いのかわからず、 「いつもなんとなく調子が悪い状態が続く」と感じていることが多いようです。

バセドウ病とは

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を甲状腺機能亢進といいます。甲状腺機能亢進症の代表的な病気がバセドウ病です。バセドウ病では脈が速い、動機がする、体重が減少する、手足がふるえる、暑がりで、汗をかきやすい、眼球が出てくる、疲れやすい、下痢気味、イライラする、眠れない、髪の毛が抜ける、微熱が続くなどの症状があります。治療が充分でないバセドウ病では流産、早産、妊娠高血圧などの危険性が増すと言われています。

つわり

「つわり」は妊娠するとだれもが経験する妊娠徴候のひとつですが、体重が妊娠前と比べて、5kg以上、もしくは10%以上やせた、あるいは1日10回以上、嘔吐しているなど、ひどい「つわり」では、バセドウ病甲状腺機能亢進が原因かもしれません。採血をするとわかりますので、医師にご相談ください。

橋本病とは

甲状腺ホルモンの分泌が低下している状態を甲状腺機能低下といいます。甲状腺機能低下症の代表疾患が橋本病です。甲状腺機能低下症は、バセドウ病と正反対で、甲状腺ホルモンの分泌量が不足しているため、新陳代謝が低下し、全てが老けていくような症状がみられます。具体的には無気力で疲れやすい、頭の働きが鈍くなり、眠気がありボーッとする、忘れっぽくて、ひどくなると認知症と疑われる、寒がりで皮膚も乾燥してカサカサになる、体全体がむくむ、便秘になる、体重が増える、髪も抜ける、脈が遅いなどの症状が出ます。甲状腺ホルモンが不足していると、不妊症や流産の恐れがあります。なお、妊娠前から、甲状腺ホルモンを服用している方は妊娠が進むに従い、甲状腺ホルモンを増やす必要があります。自己判断で服薬量を加減することなく、必ず医師の指導に従ってください。