正常な「おりもの(帯下)」は通常、やや水様で白色、量はせいぜい下着に付着する程度で、ヨーグルトの様な酸っばい臭いがあります。診断には「細菌培養検査」の他、色や量、臭い、また自覚症状に関する詳細な問診が参考になります。

細菌性膣症

常在菌と呼ばれる乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)が減少し、腟腔に種々の好気性菌や嫌気性菌が異常に増殖している状態です。混入する細菌の種類によって症状が異なるため特有の症状はありませんが、一般的に悪臭(魚臭・アミン臭)があり、粘稠(ねんちゅう)な黄色のおりものが増えます。月経後に悪臭を呈する場合は好気性菌「ガードネレラ菌」が多く、胃腸炎などの起炎菌として有名な「B群溶連菌」は外陰にただれをきたす場合があります。治療は常在菌を殺さないような抗生剤の腟内挿入が有用ですが、腟錠の挿入ができない場合は内服薬を用います。

カンジダ外陰膣炎

外陰のかゆみのほか、カッテージチーズや酒粕状と表現される、白色(ひどくなると緑白色)のおりものが増えることが特徴的です。風邪や膀胱炎の治療で抗生剤を服用した後に発症しやすく、妊娠中、糖尿病などでは再発する傾向があります。また、B群溶連菌との合併もよく見られます。治療は主に局所療法で、原則2週間、抗真菌剤を腟内に挿入し、外陰に外用剤を塗布します。治療開始後、すぐに症状は治まりますが、自己判断で中断した場合には再発が多く、注意が必要です。難治性の場合は、抗真菌剤を内服することも勧められていますが、しっかりした局所療法でも十分完治します。

トリコモナス膣炎

主に性行為によって「トリコモナス」と言われる原虫に感染します。感染者が利用したタオルやトイレの椅子などでも感染するため、家族内感染を引き起こすことがあります。一般にかゆみがあり、黄色のおりものが増えることが特徴です。治療は内服薬がメインですが、妊娠中は胎児への影響を考慮し、腟剤による局所療法を優先します。なお、原則パートナーと同時に治療します。なお内服中、飲酒は悪酔いするため、避けなければなりません。

萎縮性膣炎

閉経以降は女性ホルモンの低下に伴い、腟壁が萎縮するため、性交痛や出血、排尿時にしみるなどの症状があります。大腸菌が混入し、細菌性膣炎を合併していることもあります。治療は女性ホルモンの補充を行いますが、内服薬は全身への影響が出やすく、腟剤の挿入が理想的です。また外陰は弱い副腎皮質ホルモンの塗布が有効です。

おりものやかゆみの症状がある場合、原因によって治療方法が異なりますので我慢せずにひどくなる前に専門医に相談することをお勧めします。