栄養素、なかでも葉酸の重要性について
葉酸は3大栄養素と呼ばれる、たんぱく質、脂質、糖の中でも特に、たんぱく質の合成に関わる重要なビタミンの一つです。肝臓の中で、必須アミノ酸(※)と呼ばれるメチオニンの合成に関与しています。メチオニンはたんぱく質の合成の初めに登場し、細胞増殖の必要なDNAの合成にも必要で、メチオニンが不足すると、すべてのたんぱく質合成に支障が出ると言われています。メチオニンはまた、脂肪をエネルギーに変えるときに必要なカルチニンという物質の生合成にもかかわります。特に、妊娠初期は、胎児の細胞増殖が盛んなので、葉酸が大変重要です。
従来、葉酸は胎児の口唇口蓋裂や二分脊椎などの神経管閉鎖障害の予防として「妊娠初期」に必要と言われていましたが、最近の研究によると、常位胎盤早期剝離、妊娠高血圧症、発達障害、自閉症とも関連しているようです。
※必須アミノ酸とは、私たちの体にある20種類のアミノ酸の中で、体内で合成できないアミノ酸に分類され、毎日の食事から、摂る必要があります。

葉酸摂取は妊娠前から。サプリメントで十分な量を確保することが大切。
葉酸は、ほうれん草などの葉もの野菜や果物、豆類、レバーなどに多く含まれ、以前は妊婦に必要な摂取量1日400マイクログラムを食品から、頑張って摂取することが勧められていましたが、2017年の国民栄養調査によると、実際には20~30歳代の女性で1日平均227マイクログラムしか摂取できていませんでした。従って、栄養サプリメントで、しっかり補う必要があります。しかも、上述したメチオニンの合成にはビタミンB12、B6も必要ですので、これらのビタミンB群が含まれる総合栄養サプリメントがお勧めです。
葉酸は飲み続けることで効果を発揮します。妊娠初期の段階で、有効な葉酸の血中濃度を得るためには、遅くとも、妊娠1か月以上前、すなわち、妊娠を計画している時点から、毎日、欠かさず、摂取することが理想的です。
また、葉酸不足は、貧血とも密接に関係します。妊娠中の貧血は体重増加に伴う「鉄欠乏性貧血」が多いのですが、最近は葉酸やビタミンBが不足した場合に見られる「大球性高色素性貧血」も多くみられます。初めての分娩の場合、出血量が多いことも少なくありませんので、貧血の治療はとても大事です。「大球性高色素性貧血」は、鉄欠乏性貧血と比較して、貧血の改善に時間を要するため、早めの治療が肝要です。
暑くなる季節では、「疲れやすい、だるい」といった症状が出やすく「夏バテ」と勘違いしやすいですが、実は貧血が原因かもしれません。かかりつけの産婦人科医にご相談してみてはいかがでしょうか?
※葉酸についての動画もご視聴ください。
葉酸① 葉酸②